アルデヒドが除けない 〜PMB,DMBの脱保護〜
実験テクニック第一回
PMB, DMBの脱保護テクニック
反応の副生成物がいくらカラムしても混ざってくるなんてことはよくある話です。
それがジアステレオマーなどであれば、仕方ないと割り切って次の工程に進めるか頑張ってカラムしますが、時には
よくわからない茶色いゴミ
が混ざって除けないなんてこともよくありますよね。
今回はPMB基やDMB基の脱保護時に複製するアルデヒド類(ベンジルカチオン種)の除去方法を紹介します。
⒈ アルデヒドが除けない時
アルデヒドを除くかなり有効な方法に
アルデヒド塩の形成
という方法があります。
Liquid-Liquid Extraction Protocol for the Removal of Aldehydes and Highly Reactive Ketones from Mixtures
Org. Process Res. Dev. 2017, 21, 1394-1403.
最近になってこの方法を聞くようになったなと思ったら、かなり新しい論文でこの方法が紹介されていたのですね。
【実験方法】
1. アルデヒドを含むCrude Mixtureに亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)飽和水溶液を加える。
2. 数分撹拌した後、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出する。
下図のようにアルデヒドは水溶性のスルホニウム塩になり、分液操作で容易に除去できます。
2. 反応系内でベンジルカチオンが基質と反応して、副生成物を形成してしまう場合
さて、アルデヒドが系内にいる場合はこのように除けます。
一方、PMBやDMBを脱保護する際に経由するベンジルカチオンが他の基質由来のメトキシベンジル基と反応してしまい、反応系内が複雑化してしまうことがあります。
解決策1:水でベンジルカチオンをトラップする
PMBの脱保護条件でよくあるのは
CAN(1〜2 equiv), MeCN/H2O = 10/1
DMBの場合
TFA (solvent), H2O (10等量)
のように水を添加する条件。
他にも、DMB基の場合、無機酸(塩酸や硫酸)、p-TsOHの水溶液を溶媒にして加熱還流するといった条件も有効なことも。
解決策2:電子豊富な芳香族求核剤でベンジルカチオンをトラップする
水では求核力が不十分でベンジルカチオンがトラップ仕切れていない場合、
アニソール または ペンタメチルベンゼン
を10当量くらい添加すると脱保護が綺麗に進行するかもしれません。
これら電子豊富な芳香族求核剤は水よりも効率的にベンジルカチオンをトラップしてくれます。系内に副生する余計な化合物は、時に除けないだけでなく基質と反応して収率を下げてしまいます。
以上の解決策で反応系の生成は上手くいったでしょうか?
うまくいかなければ反応の収率低下の原因を突き止める方法として、以下のものを基本的に試します。
・反応機構の考察
・CrudeのNMRやマススペクトル
・副生成物の単離
・Google検索(英語、日本語)
収率低下の原因が日本語Google検索で出てくると便利ですよね。
このブログに私の経験を書き溜めて、トラブルシューティングが日本語でヒットするようになれば良いなと思っています。