【至言】教育に金をかけられない国に未来は無い
今の日本の教育事情は問題だらけです。
控えめに言っても、最悪な状況です。
そこで、現在の教育の問題点をまとめてみようと思います。
- 大学院教育の問題
- 大学教育の問題
- 学校教育以外の問題
あえて遡る順番で議論していこうと思います。
なぜなら、最終ゴールから遡って考えて行った時に、全ての教育課程に通じて問題が生じている事がわかると思うからです。
1. 大学院教育の問題
この段階は、非常に専門性が高い研究をする段階になります。基本的には大学院生はボスの方針に沿って研究や業務を遂行しますが、その内容は時に創造的なものになります。言われた事をただこなすだけではなく、自分で問題点を分析し、どのように対応すれば解決できるのか考え、実行します。
大学院生は、教授の指示を待って言われた事だけをやるようではいけません。自らアイデアを提案し、その仮説を実証し、論文にしてようやく学位を取る事ができます。
うみねこ的視点による本段階の問題点は、
・教授が研究について考える時間が足りない事
・研究以外の指導を行う余裕がない事
新しい研究のアイデアは学生も当然考えるわけですが、ラボを運営するのはあくまでも教員。教員が豊富なアイデアとプロジェクトを持ち、学生を導けると学生も研究にのめり込めるはずです。
また、大学院では研究のスキル以外にも、プレゼンテーション(日本語・英語)や論文執筆(主に英語)の能力、プロポーザルを提示する力などが求められます。これを十分に指導できていない研究室はまだまだ多いと思います。
そもそも、大学の雑務に圧迫され学生の指導に時間が取れる場合が少ないようです。
解決策はズバリ、業務の細分化です。例えば、
・秘書に研究費の管理やメールによる問い合わせを処理してもらう、
・テストの採点はTAに任せる、
・入試問題の作成には(難しいかもしれませんが、)問題作成専門の職員を雇う。
などです。
もったいぶらずに言ってしまえば、この業務の細分化が全ての教育ステージにおいて不完全であると言えます。
2. 大学教育の問題
大学院と大学を分けたのは、専門分野と基礎分野を区別するためです。
大学は専門性の高い大学院教育に進む前の基礎学習段階と言えます。有機化学で言えば、ブルース有機化学、ウォーレン有機化学、最新有機合成法などの教科書を勉強する段階ですね。とは言え、専門分野を決めかねている人には以上の教科書は少し専門性が高すぎます。そのような人達向けに、理工学概論、化学概論といった類の広く浅い授業も多く設置されていますね。
うみねこ的視点による本段階の問題点は、
・学生が楽に単位を取る手段を探すのに必死
・将来的に役に立たない膨大な科目の単位が必要
結局、大学や大学院で学んだ事が社会に直接的に役立つことは少ないのが一般的なので、楽に単位を取得するということは決して悪いこととは言い切れません。しかし、大学で学んできた事が本当に役に立たないのでしょうか?
この問いに対する答えは、アカデミア(学術界)に進むかインダストリー(産業界)に進むかで真逆になります。
アカデミアは直近では役に立つかわからないものの、研究を続けていけば10年、20年後に世の中の役に立つかもしれない事を研究しています。
インダストリーはお金を稼がないといけないので、10年間お金にならないようなプロジェクトに興味はありません(PfizerやMerckなどのよっぽどお金がある企業は別です)。
大学の授業はアカデミアで活躍する先生方が行うので、やはり内容もアカデミア寄りになります。この授業がインダストリーで役に立たないのは当たり前です。全く違うことを教えているのですから。学問の基礎は、あくまでも学術研究のために重要なのであって、基本的すぎることは産業に直結しません。
以上の点を踏まえて私が提案するのは、
産業界から講師を招く
大学院研究の最先端を見せる
産業界と学術界の過去の成功例と成功に至った経緯というのは学生にとってかなり刺激的な内容だと思います。
こうする事で、学生にできるだけ早く将来像を持ってもらい、それに向かって何を身につければいいのか自分たちで考えさせる作戦です。また、学生が何かを学びたいと思った時に、すぐにそれを提供できる環境が必須です。学術的な教育は今の環境でも教授が授業内容を変更すればいいだけですが、産業に役立つスキルを学ぶ機会は少ないと感じます。
若手を教育するのは大学だけの役目ではありません。企業に勤めるベテランの人達は若手を教育する義務があると思います。そしてその実践的教育は、企業に入ってからではなく大学から徐々にスタートすべきだと思います。
また、大学教授の中には「役に立つ」ことを毛嫌いする人達もいますが、これは悪い思考です。アカデミアは役に立つことを直近に意識しないで研究すべきですが、役に立つことを嫌うというのは飛躍しています。
アカデミアの基礎研究の理想の未来は、それが役に立つ技術にまで成長することです。
アカデミアはよりインダストリーとの関係を深め、双方の視点で次世代の学生を教育すべきです。
3. 大学教育以外の教育問題
子供は、未就学、小学校、中学、高校など様々な段階を経て大学入学、就職によって社会に出ていきます。
ここまでの流れで私の主張はわかって頂けていると思いますが、全ての段階において問題なのは業務の細分化ができていないことです。
ここでは、筆者に高校教師の友人が多いことから、高校教育にフォーカスして話していきます。
多くの高校の先生は非常にやる気があり、子供が大好きで、一人一人の面倒を見たいと思っていると思います。しかし、学校の雑務に圧迫されて、子供と接する時間がない、授業時間が足りないという声を多く耳にします。これは教員の能力云々ではありません。教員の仕事というと、担任(HRや総合の授業)、専科の授業、期末・中間テスト作成、採点、電話対応、保護者面談、部活の顧問、その他事務(経営関係など)。
力のある先生であれば生活指導係や進路指導担当などになることもあり、さらに忙しさは倍増します。通常の業務だけでも、よほど効率的に働ける人でシステム化された職場にいなければ満足にこなすことはできないでしょう。
また、最近では文部科学省の教育課程変更やアクティブラーニングの導入など新たな教育方針を学ぶ時間も必要です。これにより教案を一新するのも一教員の仕事です。仕事時間外にこのような作業をしている場合も多いそうで、ほとんど休みはありません。
以上の膨大なタスクから、教員は通常の会社では考えられないほど大量の残業をしています。しかし、教員の残業代は月額の給料の4%しか払われないという制度「給特法」という法律があるので、月に100時間残業したところで、月収20万円の教員の残業代は4000円ということになってしまいます。
また、休みも取りづらいのが教員の悩みどころです。週に10コマ担当している教員が一週間連続で休みを取ることはほぼ不可能ですね。そこで文部科学省は、夏休みや春休みの時期にまとめて休みを取れる制度を作ろうとしているそうですが、これは現場の状況をまるで分かってない政策のようです。夏休みのような長期休暇の間も部活の顧問や研修、合宿や旅行の引率など様々な仕事があるので、むしろ日々の勤務よりも拘束時間が長い仕事がバシバシ入ります。つまり学校の長期休暇は教員の長期休暇ではないということです。
現状えげつない量の仕事が課せられる教員のお仕事ですが、これを解決する方法はやはり業務の細分化ではないでしょうか。
例えば、
テストの採点を一部担当してくれるアルバイトを雇う
部活の顧問や引率に、外部の専門的な指導者を雇う
アクティブラーニングなどの新制度を導入するために日雇い講師を雇う
将来の夢や進路を定めさせるための社会人・大学教授による講演会を行う
電話対応や出席記録の管理などを専門に担当する事務を雇う
当然、人を雇うということはその分の人件費が発生するので、簡単にできることではないと思います。学校がお金を稼ぐために学費を高くすると、少子高齢化に更なる加速をかけることになるのでできるわけがありません。そこで、国や地方の自治体からの支援金や財団からの助成金などが資金源になれば、日雇いのアルバイトや講演者などを呼ぶことができるようになると思います。
上に挙げたアルバイトや事務さんの中で、常勤しなくてはいけない人はいないと思います。例えば、出産を期に仕事を辞めたが、子供が大きくなってきて働く余裕が出てきたお母さんや、定年退職したがまだ働く元気があるベテランの人たちなどが働く場所として最適だと思います。週に1~3回程度の出勤でよければ体力に自信のない人でも無理なく働くことができます。
また、このようなシステムの導入は、人手不足で悩む現代日本を救済する一つの手段になりうると考えられます。
教育にお金をかけられない国に未来はない。
お役人の方々には、ぜひ教育に対してもっと多くの関心を向けていただきたいですね。