ChemDraw 19.0を使いこなす!
最近ケムドロの最新バージョン18.1がリリースされました。
これを機に(というか16からアップデートしたことを機に)ChemDraw18の使い方や便利機能をまとめておこうと思います。
ーーー2020/05/21ーーー
最新バージョン19.0の内容も盛り込んだ解説にアップデートしました!!
ーーー2021/09/11ーーー
続編記事:
【魔改造】ChemDrawのHotkeyをマニアックにカスタマイズしてみた。 - Samurai Journal of Chemistry
Windows版の説明になりますが、Mac版はWindowsのControlキーをCommandキーに置き換えれば同じ操作になります(一部例外あり)。
赤色は個人的によく使うショートカットキーです。(ほぼ全てですいません···)
【ショートカットキー】
化学構造の描画
[左ダブルクリック] 分子全体を選択、グループ化されているオブジェクト全てを選択
[ctrl + クリック&ドラッグ] コピーしながら移動
[shift + クリック&ドラッグ] 並行または垂直に移動
[ctrl + shift + クリック&ドラッグ] 並行または垂直にコピーしながら移動
[shift + 選択(クリック)] 追加で選択 (選択されている箇所は選択解除)
[ctrl + L] Fixed Length のON/OFF (ONの時、結合長を一定にする)
[ctrl + E] Fixed Angle のON/OFF (ONの時、結合角を一定にする)
[shift + B] 結合の立体をUPに (黒塗り)
[shift + H] 結合の立体をDOWNに (点線)
[shift + W] 楔(くさび)形のUP
[H] 楔(くさび)形のDOWN
[ctrl + shift + C] 文章を中央揃え (Center)
[ctrl + shift + R] 文章を右揃え (Right)
[ctrl + shift + L] 文章を左揃え (Left)
[ctrl + shift + alt + C] オブジェクトを中央揃え(縦方向) (Center)
[ctrl + shift + alt + T] オブジェクトを上揃え (Top)
[ctrl + shift + alt + B] オブジェクトを下揃え (Bottom)
[ctrl + shift + alt + M] オブジェクトを中央揃え (横方向) (middle)
[ctrl + shift + alt + R] オブジェクトを右揃え (Right)
[ctrl + shift + alt + L] オブジェクトを左揃え (Left)
[ctrl + G] 複数のオブジェクトをグループ化
[ctrl + shift + G] グループの解除
[ctrl + shift + V] 上下反転
[ctrl + shift + H] 左右反転
[ctrl + shift + alt + V] 上下方向に180° 回転 (不斉点があるときに効果を発揮)
[ctrl + shift + alt + H] 左右方向に180° 回転 (同上)
[ctrl + R] 回転角度を入力し、回転 (正確に回転可能)
[ctrl + K] 倍率を入力し、拡大・縮小(複数のオブジェクトを同じ倍率で拡大・縮小したいときに便利)
数字キーで化学結合を描く
原子の上で
[0] 単結合を一本伸ばす(ホットキーの丸と逆方向)
[1] 単結合を一本伸ばす(ホットキーの丸の方向)
[2] =O(カルボニル酸素)と単結合を伸ばす
[3] ベンゼン環を結合させる
[4] 楔型結合と単結合を伸ばす
[5] 楔(破線)と単結合を伸ばす
[6] 六員環を伸ばす
[7] 五員環を伸ばす
[8] =CH2を伸ばす
[9] メチル基を二つ伸ばす(イソプロピル型になる)
[4], [5]は覚えておくと案外結構使える。
結合の上で
[1] 結合を単結合にする
[2] 結合を二重結合にする
[3] 結合を三重結合にする
[4] 四員環を作る
[5] 五員環を作る
[6] 六員環を作る
[F2] オブジェクトを前面に [F3] オブジェクトを背面に
[F9] 下付き [F10] 上付き
その他
[ctrl + alt + N] 化合物のIUPAC名を表示
[ctrl + J] 二つの結合を選択してctrl Jを押すと一つ目に選択した結合に対して二つ目に選択した結合を重ね合わせて統合する。
【クリック&ドラッグのテクニック】
・Controlキーを押したまま選択したオブジェクトをクリック&ドラッグ
→化合物をコピーしながら移動→ドロップでコピー
(ドロップした後にControlキーを離さないとこの操作は無効になり、ただの移動になる。)
Macの場合この操作をOptionキーで行う(Commandキーではない!)
・Shiftキーを押したまま選択したオブジェクトをクリック&ドラッグ
→化合物を縦軸または横軸に平行移動→ドロップで位置を確定
(ドロップした後にShiftキーを離さないとこの操作は無効になり、ただの移動になる。)
・Shiftを押したまま範囲選択
すでに選択してある範囲の選択を残したまま、新たに選択範囲を追加する。
すでに選択してある範囲を巻き込んだ場合、その選択部分を解除する。
Shiftを押したままオブジェクトをクリックすると、クリックしたオブジェクトを選択範囲に追加。ダブルクリックするとグループされたオブジェクト、または単一の分子を選択。
Windowsでテンキーがある場合、Altを押しながらテンキーで ”4桁の数字” を入力してAltを放すと記号が入力できる(参考)。
Alt 0150 [–] enダッシュ
Alt 8722 [−]マイナス
Alt 0176 [°] 度
Alt 0183 [・] センタードット
Alt 0181 [μ] マイクロ
Alt 0177 [±] プラスマイナス
Alt + テンキーのマイナス → enダッシュ(windows wordで確認)
【追記】最近突然ChemDraw上でenダッシュが表示されなくなりました(下図)。
signals notebookでも記号が軒並み文字化けして非常に迷惑被っていますが、ChemDrawでも記号のトラブルが起きている様子。PerkinElmerさんどうにかしてー
解決策ですが、Arialのマイナス記号は表示できるようです(Alt 8722)。
Macの場合、半角英数入力になっていることを確認して、Optionキーと様々なキーの組み合わせで簡単に記号が出せます(参考)。
[Option + -(マイナスキー)] [–] enダッシュ
[Option + K] [°] 度
[Option + Shift + 9] [・] センタードット
[Option + M] [μ] マイクロ
[Option + Shift + ^(サーカムフレックス)] [±] プラスマイナス
α,β,γ,δ,ε,ωなどはa,b,g,d,zを入力してからフォントをSymbolに書き換えています。他人が開いた時に文字化けすることがあったりして少し不便。
【追記】
ChemDraw19のアップデートで、ArialやCalibriなどの英字フォントのまま日本語を入力すると、文字化けせずに日本語で表示してくれるようになりました。
そこで、Arial選択時に「あるふぁ」を「α」に変換するとArialの「α」が出るようになりました。べんりー
これ以外の文字をケムドロで出そうと思ったことがないのでこれで大丈夫だとは思いますが、何か他にあればコメントお願いします。
【ホットキーのカスタマイズ】
Chem Draw Itemsフォルダ(スタイルシートなどが保存されているフォルダ)の中にあるhotkeys.xmlというテキストファイルをメモ帳などで開く。
その中の対応する箇所を編集したり追記したりする。
<改変例1>
atom上でのホットキー「TMS、TBS」
<Hotkey key="t" command="LABELTEXT" value="TMS" description="Atom Labeling"/> <Hotkey key="T" command="LABELTEXT" value="TBS" description="Atom Labeling"/>
いつかのバージョンまではtでTMSが出たんですけど、tをテキストに割り振ったので紛らわしさを回避するために消されたんでしょうか。atom上のホットキー設定なので、何もないところで「t」を押した時にテキストエディットモードになるホットキーとは被りません。
<改変例2>
エディットモード切り替え。何もないところでキーを押した時のモード切り替えの設定変更。
<Hotkey key="b" command="TOOLMODE" value="BENZENE" description="Activates the benzene draw tool"/>
<Hotkey key="h" command="TOOLMODE" value="CYCLOHEXANE" description="Activates the cyclohexane draw tool"/>
<Hotkey key="p" command="TOOLMODE" value="CYCLOPENTANE" description="Activates the cyclopentane draw tool"/>
<Hotkey key="d" command="TOOLMODE" value="CYCLOPENTADIENE" description="Activates the cyclopentadiene draw tool"/>
<Hotkey key="x" command="TOOLMODE" value="SOLIDBOND" description="Activates the bond draw tool"/>
元々ベンゼンは「j」、シクロヘキサンは「u」、シクロペンタンは「U」など直感的に合わないホットキーが設定されていたので、それぞれ「b」「h」「p」と変更しました。シクロペンタジエンなんてほとんど描かないですが、被りがなかったので「d」にしました。
他にも好みのホットキーを設定することができます。あまりにも頻用する官能基があれば、それも登録してしまっても良いですね。例えばBoc、Fmoc、Cbzはデフォルトでホットキーが入っていますが、Teoc、Trocなどは入っていないので好みで入れることもできます。
【実践動画】
1. アセトアミノフェンを描く
OHスタート
ホットキーx → 画面タップ → 単結合を一瞬カーソルで触れてテンキーを押す → ホットスポットを左側に持っていく → O → ホットスポット移動 → 3 → n → 1 → 2
Acスタート
ホットキーx → 画面タップ → 単結合を一瞬カーソルで触れてテンキーを押す → ホットスポットを左側に持っていく → 2 → n → 1 → 3 → 1 → o
2. エリスロマイシンを描く
非常に複雑ですが、2分くらいで描けます。
・4, 5のホットキーを活用すること
・control + jでOHと糖をつなげること
以上がキーですかね。下の6員環の4級炭素は、一度「9」で2本のボンドを一気にはやした後にカーソルを持っていって「w」と「h」でクサビに変換しています。